2023年10月19日木曜日

2023年5月に遊んだゲーム④:アオイシロ HDリマスター(Switch版)ネタバレ無し

美しい世界観とBGM、力尽きたテキスト
リマスター化で削除された便利機能
アオイシロ HDリマスター(Switch版)


販売元:サクセス
プラットフォーム:Switch/Steam
ジャンル:和風伝奇アドベンチャー
発売日:2023年5月25日

プレイ時間:約35時間

公式HP:https://akaao.success-corp.co.jp/



本作は、名作和風伝奇アドベンチャー『アカイイト』の姉妹作品として2008年4月5日にPS2からリリースされた作品で、そんな『アカイイト』と『アオイシロ』が2023年Switch・Steam版でHDリマスター化される運びとなりました。



実はアカイイト・アオイシロHDリマスターが出る2年ほど前にPS2版を買っており、アカイイトは完走済み、アオイシロは積んだままの状態となっていたのでPS2版を買ったタイミングが最悪だったんですねえ~!
約15年の時を経てリマスター化されるのは読めるか!という反応になったのでこれはもう仕方ないとし、アオイシロはSwitch版で遊ぼうとお布施も兼ねて特装限定版を購入しました。

全EDを見て、ギャラリーなど全て回収し完走した感想なのですが、結論から言いますと色々と惜しく、非常にもったいない出来栄えと感じました。
百合ADVの主人公にCV日髙のり子さんを起用する、海を舞台にした透き通り美しくも妖しい世界観、作品の雰囲気を引き立てるクオリティのBGMなど、そこだけ見れば非常にアドなのですが……。



<以下、ネタバレ無し感想>

良い点
伝奇物として本格的な作り込み

古い伝承や習慣が伝わる海に面した田舎町、卯奈咲(うなさか)を舞台に、剣道部強化合宿として卯奈咲へやって来た主人公、小山内梢子は不思議な少女、ナミとの出会いをきっかけに不思議な出来事へ巻き込まれていき、卯奈咲に伝わる謎へ迫っていくのが本作の物語の大筋となります。


鬼ヶ島に禁則地、鬼の踏み石、天狗など和風伝奇物としては鉄板の用語がバンバン飛び交い、冒頭から絵巻物のスチルが入り卯奈咲に伝わる鬼退治の御伽噺が語られるシーンは物語への没入感の掴みとしてもとてもバッチリだと思います。
特にコハクルートのシナリオは日本伝承をガッツリ絡めており良いものでした。
和風伝奇物、日本神話、平安時代に加え、馬瓏琉(ばろうりゅう)という名前の人物がおりバロールなどケルト神話モチーフを取り入れているのもなかなか面白かったところ。

美しいキャラデザ、背景グラフィック
個性際立つキャラクターデザインはいい仕事をしており、更に豊富なスチル量は見所抜群。
美しい青い海、自然豊かな山、歴史を感じる建物、椿の森の幻想的な雰囲気は目を惹かれるものがあるので一見の価値あり。

アオイシロの世界観を引き立たせる美しいBGMと主題歌
霜月はるか氏とrita氏が手掛けたOP・ED曲に、アオイシロの透き通るような美しさと和な世界観にマッチしたBGMは非常に秀逸。
度々、作中の大事なシーンをしっかり盛り上げてくれました。

ADVとして整ったシステム、膨大なボイス量


目を引いたシステムの一つが、ADVを楽しむにおいて配慮されているシステム周りでした。
キャラクター毎に音声をON/OFFに切り替えられる設定があるのですが、対象キャラクターがON/OFFにされた事に対しての反応があるのが驚き。
システム音声についても膨大な量が収録されており、アオイシロを起動した時間帯によってタイトル画面でのキャラクターのアナウンスが異なるだけでなく、それが全キャラクター用意されているのだから収録されたボイスのボリュームには目を見張るものがあります。

また、どうしても特定のシナリオやスチルを解放できないユーザーへの救済措置としてネタバレという項目が用意されており、全EDやギャラリー、用語集を全て解放できるという大胆な取り組みが行われているのも印象的でした。
クイックセーブやクイックロード、分岐図や豊富なセーブ量と、当時2008年に発売されたADVとしては相当配慮されたシステム周りだと思います。

真EDとなるグランドルートの追加
「アカイイト」は各ルートにおいて、必ず誰かしらの犠牲があったという一点が個人的に辛いものではありました。
「アオイシロ」では真EDとなるグランドルートがあり、ヒロイン全員が幸せな結末を迎え大団円になっているのがホッとしたところ。



悪い点
バッドEDが多岐に渡る上、結末が殆ど雑
エンディングの種類が32個あった「アカイイト」に対し「アオイシロ」のエンディング種類は56個。
「アオイシロ」には36通りのバッドEDが用意されておりますが、バッドEDの殆どが結末似たり寄ったりで、雑魚敵にやられたり海に落ちたり首をはねられたりを何パターンも見せられる羽目になるので、数だけ見れば膨大なボリュームだと思われますが、その実中身は薄っぺらく原液から何倍も薄めたような味気無さ。
全ルートコンプリートしたいのに、似たような結末を見せられ「またか……。」となる事が多々ありました。

テキストのクオリティにムラがある
シナリオの作りが良くできているルートと、そうでないルートがありテキストのクオリティにムラがあるなと感じました。
良いシーンは本当に読みやすく惹かれるものがありますが、ダメなところは本当にダメで途中で力尽きたのかな……?と思ったり。
PS2版発売当時は延期を繰り返していた事もあり、色々と間に合わなかったんだろうかと察せられるものがあります。

テキストの薄さ故に魅力が損なわれてしまった登場人物
上記の通りシナリオの出来栄えにはムラがあり、それ故登場人物の魅力が今一つに感じられるところがありました。
メインヒロインの一人、相沢保美は主人公に恋愛感情を抱いていると示唆される描写がまあまあ見受けられており、ルートによってはそういう百合描写も見せてくれます。
ただ、そのシーンが唐突に無理やり組み込まれた感が否めなかったり肝心のエンディングがあっさりめなど肩透かしを食らう事もあったり。
用語辞典はたっぷり詰め込まれている反面、状況描写や心情描写は唐突なところが見受けられました。せっかく良いキャラクタービジュアルや声優を起用している中で感情移入がし辛いというところは中々致命的だったなと。
部員が大変な目にあった後すぐに皆で水着イベントに入るな。

百合と謳う割には百合要素が弱め
「アカイイト」は、製作側からしても百合作品として打ち出しておらず女性主人公の和風伝奇アドベンチャーというのがあくまでも売りだった事に対し「アオイシロ」は百合要素もあると公言されていました。
実際のところ、各ルートでの関係性においては精神的な繋がり、絆が強調されており明確な恋愛描写が薄かったのが物足りないところ。
この辺りは、当時2008年のゲームだとまあそんなもんだよな!と割り切れるところはあったのでまあ。

非常に便利だったはずの選択肢までスキップ機能がHDリマスター版で削除されている
前述の通り「アオイシロ」のED数は56個と多岐に渡り、その上フラグ管理がとても大変でADVとしても難易度が高めです。

選択肢まで瞬時に行けるスキップ機能があれば良いのに……とボヤいていたら、Twitter(自称X)検索で「PS2版には選択肢までスキップ機能があった」との呟きが。

PS2版にあった機能がHDリマスター版では削除されているなんて、そんなはずがと思ったので積んでたPS2版アオイシロの説明書でも確認するか…。

※PS2版説明書より

※Switch版画面

そんな……そんな事ある!?PS2版にあった機能がHDリマスター版で削除される劣化仕様とかある!?
トゥルーED、グランドルートに辿り着くには何度も選択肢の試行錯誤を繰り返さねばならず、選択肢に行きつくまではスキップ機能を使って長々と続くテキストの早送りをする必要があり、これが地味に大変なので、バッドEDに辿り着いてはロードして、また次の選択肢まで早送りを繰り返すという作業が苦行へと変わっていきました。
せめて、選択肢までジャンプする機能がPS2版と同じようにあれば少しは楽になれたのに、何故……。



総評
良い点もあるけど悪い点もまあまああり手放しで褒める事ができない、読後感の『良い……作品でした……』という余韻にも浸れなかった70点くらいの佳作というのが、完走した感想です。

素材は良かったのに調理が雑になった仕上がりという印象があり、当時発売延期を繰り返していた事から色々と間に合わなかったんだろうなあと思います。
色々と勿体なく、ちゃんと作り込めていれば良作になりえたかもしれない可能性があったのに…としこりが残る形となりました。

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